DIR EN GREYは美しい白と攻撃的な黒が織りなす、まさにgreyなバンド。「アクロの丘」は、彼らの初期の名バラードであり、白の側面を際立たせた一曲だ。
1999年1月20日発売。「ゆらめき」「残-ZAN-」と並ぶ3枚同時リリースのメジャーデビューシングルの一つで、プロデュースをX JAPANのYOSHIKIが担当したことでも知られている。
2枚同時シングルを発売したGLAY、3枚同時シングルを発売したL’Arc〜en〜Ciel。前年にあたる98年には、2つのモンスターバンドから同時発売というスタイルが提示されており、すでに慣れはしていた。
けれど、メジャーデビューに3枚のシングルで切り込んでくるバンドは前代未聞だったため、結構な衝撃だったのを覚えている。レーベルでも相当な力の入れようだったのだろう。
しかし、その頃私は高校生。限られたお小遣いで3枚をいっぺんに買うことはできず、どれか1枚を選ぶしかなかった。
音楽に刺激を求める傾向にあった私が手にしたのは「残-ZAN-」。今でも、この選択は間違っていなかったと思う。スラッシュメタルとハードコアパンクを足して2で割らない「残-ZAN-」の、尖りに尖ったアグレッションに夢中になった。
ポップな「ゆらめき」もレンタルしてよく聴いた。一方、当時「アクロの丘」は3番手って感じで、そこまで刺さらなかったような気がする。だが、今となってはこの「アクロの丘」が一番沁みるのだ。
死にゆく者の視点──8分間、冗長にならない構成力
アクロの丘は8分に渡る大作。しかし、決して冗長になることはなく、ドラマ性をしっかりと演出する構成力の高さが光る。
初期の粗さを他の曲ほど感じさせず、最小限の音だけで余白さえも味方にしながら繊細な世界観をうまく描き出す。
歌詞の世界観も悲壮感が漂う。大切な人との離別というシーンでは割と普遍的なテーマで描かれているのだけれど、失くした相手を思うのではなく、死にゆく者の視点で語られるオリジナリティのある切り口は京らしい。
繋いでた指が解けて 深く沈みゆく僕 最後に見た君を愛してた 叶わない夢 アクロの丘で待つ 君と眠りたくて覚めない夢
引用:アクロの丘
別れの瞬間の心境や、生命の儚さが生々しくはなく、あくまで美しく描写されている点がすごくいいなと思う。
「生まれ変わったらまたあの丘で会おう」と遺した約束──それは叶わない夢。年齢を重ねるほど、この曲の持つ重みがしっかり伝わる。祖母や祖父など、大切な人との別れを経験し、当時に比べ”死”が身近な存在になったからなのかもしれない。
時間をかけ、自分の内面で育つ曲というものが、確かにある。そんなことを「アクロの丘」からは学ばせてもらった。
アーティスト紹介|DIR EN GREY
1997年、大阪で結成。1999年1月20日のメジャーデビューに際して「ゆらめき」「残-ZAN-」「アクロの丘」の3作を同時発売し、いずれもオリコントップ10内に初登場する鮮烈なスタートを切った。その後はテレビの前線から距離を置き、作品とライブで更新を重ねながら音楽性を深化。国内外のフェスへの出演を経て、国境を越えたファンダムを築く。2026年4月には、約3年10か月ぶりとなる12thアルバム『MORTAL DOWNER』をリリース予定。

